総務省統計局が発表している日本の住宅・土地統計調査の結果の概要(平成20年)によると、集合住宅においては、木造が集合住宅の鉄筋造、鉄骨造など、非木造化が進んでいるものの、一戸建てについては全体の92.6%と、圧倒的に多くなっています。
日本では、地震や台風などの自然災害の心配もあるのに、なぜ木造の家が好まれるのでしょうか。
今回は木造の家のメリット、デメリットについてご紹介します。
1、日本にはなぜ木造の家が多いのか?
単純に地震や台風、そして火災などにも強い家を作ろうと思えば、石やレンガでできた家やコンクリート造の家が手軽だと思われるでしょう。それなのに、地震や台風が多い日本に、木造の家が多いのはなぜなのでしょうか。
日本では、古来より釘を使わずに組んでいくだけで建物を建てる「木組み」という伝統工法があります。熟練の大工が鍛錬された技術で狂いなく組んでいった建物は、地震にも十分耐えられるものです。このような技術を受け継いでいるので、木造と言っても、補強やメンテナンスをしっかりしていけば、自然災害にも強い家になれるのです。
そのほかにも、日本において木造の家が主流であるのには理由があります。それは、日本には四季があり、また、湿度が高い気候であるということが一番です。
日本では、年間の気温変化が激しく、湿度が高いため、風通しが悪いコンクリート造や石、レンガなどの家では快適に過ごすことが難しいからなのです。木造の家であれば、湿度の高いときには木が湿気を吸ってくれますし、逆に乾燥すれば水分を放出してくれるので、快適に過ごせるのです。
また、木はコンクリートや鉄骨、鉄筋に比べ、断熱性にも優れているため、熱伝導性が低い(熱を伝えにくい)のです。だから、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。
そして、日本の国土面積の3分の2は森林です。日本は昔から森林資源に恵まれているため、木を有効活用しているというわけです。
一時期、森林伐採などが問題となりましたが、最近は、木を伐採したら植林するという活動も国を挙げて行なっています。木材は、植林することで、比較的簡単に再生できるため、石油や石炭などのように枯渇が懸念される資源よりも活用しやすい上、植林することで、地球温暖化の抑制にもつながるのです。
このような背景もあり、日本では今後も木造の住宅が主流となっていくだろうと予想されています。
2、木造の家と鉄骨造や鉄筋造の家との違い
ここまで日本の風土的な側面から木造の家が多い理由や木造の家でも自然災害に耐えてきた経緯をご紹介しました。
ここでは、改めて、鉄骨造や鉄筋造と木造の家の違いについて簡単にまとめておきましょう。
(1)木造の家
木造は、文字通り、木でできた家のことです。日本では昔からある建築方法です。
木造にも大きく分けて2種類あり、現在の主流は木造軸構法です。これは、柱と梁で土台を囲み、筋交いと言って木材をたすき掛けのように斜めに入れて組んでいくことで家を支える構造をしています。もう一方は、在来構法といい、神社やお寺のようにできるだけ釘を使わずに木を組んで作る方法で、いわゆる伝統構法です。
(2)鉄骨造の家
鉄骨造の家とは、骨組みに鉄骨を使用して作られた家のことです。S造(steel:鋼鉄の略)と呼ばれることもあります。
そして、鉄骨造には大きく分けて重量鉄骨と軽量鉄骨の2種類があります。
①重量鉄骨造の家
重量鉄骨造の家とは、柱や梁を鋼材の厚さが6mm以上のものを使って建てた家のことです。柱と梁が太く頑丈なので、柱の数が少なくすみ、間取りの自由度が高いという特徴があります。しかし、鋼材がとても重いため、それを支えられる強い地盤を持っている必要があります。また、木造よりもコストが高くなります。
②軽量鉄骨造の家
軽量鉄骨造の家は、厚さが4mm程度の鋼材を使って建てられたものを言います。木造よりも耐久性があるとして、数年前から鉄骨の家を選ばれる方も少し増えてきましたが、その中身は重量鉄骨造ではなく、この軽量鉄骨造の家のことです。
軽量鉄骨の場合は、重量鉄骨よりも地盤の強さを選びませんが、大手ハウスメーカーが量産して売り出していることもあり、品質や仕上がりは一定しているものの、間取りプランが似通っているものが多く、個性的な家にしたいという方や、自由な間取りプランにしたい方には不向きである可能性があります。
(3)鉄筋コンクリート造(RC)の家
鉄筋コンクリート造は、マンションによくある構造で、いわゆるコンクリート造の建物のことです。RC造と略される場合もあります。一戸建てで、この構造の家を建てられる方は珍しいですが、耐久性は、木造、鉄骨造よりも優れています。ただし、風通し、水はけが悪く、部屋のにおいがこもりやすいなどのデメリットもあります。
また、木造や鉄骨造よりもコストが高く、地盤が強くなければなりません。
(4)鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)の家
鉄骨鉄筋コンクリート構造とは、鉄筋コンクリートに鉄骨を組み合わせた建物のことです。こちらもマンションによくある構造です。鉄筋コンクリート造よりも鉄骨をたくさん配置するため、耐震性、耐久性、耐火性が強化されます。しかし、工程が複雑になるため工期が長くなる上、コストも高くなるというデメリットがあります。
3、木造の家のメリットとデメリット
ここまで、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の構造についてご紹介しました。耐久性で言えば、以下の通りです。
鉄骨鉄筋コンクリート造>鉄筋コンクリート造>鉄骨造>木造
しかし、住まいは、その人の体質、価値観や、居心地の良さで大きく評価が変わるものです。
それでは、木造の家とその他の構造を比較した場合、木造の家にはどのようなメリットがあるのでしょうか。他の構造を踏まえた上で、木造の家のメリット、デメリットについて整理してまとめましょう。
(1)木造の家の3つのメリット
①コストが安い
木造の家は、最もコストが安いというメリットがあります。
②間取りの自由度が高い
木造の家は、基礎、土台、柱、梁で支えているのでその他の部分は自由にプランニングができます。リフォームや増築もしやすいのがメリットです。
③風通しが良く快適に過ごせる
日本の国土はほとんどが森林。古来より、木造の家に住んでいた歴史があるため、リラックス効果に期待できます。鉄筋コンクリートや鉄骨造では、夏は暑いという声がよく聞かれますが、木造の場合は、風通しが良いため、夏は涼しく、過ごすことができます。
また、木には水分を蓄えたり、放出したりする特性があるため、調湿効果にも期待できます。
(2)木造の家の3つのデメリット
①遮音性が低い
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造は、大人だけでなく、小さなお子さんの声や走り回る音もほとんど気にならないと言われますが、木造や鉄骨造の場合は、音が漏れやすいというデメリットがあります。
②耐久性が劣る
国税庁によると、木造住宅の法定耐用年数は約20年、鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅や鉄筋コンクリートの住宅で約50年となっていますから、木造の家の耐久性は他の構造のものよりも劣るといえるでしょう。ただし、これはあくまでも税務上の数字なので、実際はどの構造であってもこの数字よりも短いと考えるのが一般的です。
③耐火性が劣る
やはり、木造の家だと、鋼材を使った建物よりも、火災に弱いというデメリットがあります。もっとも、意外かもしれませんが木は10分間加熱し続けても約80%の強度を保つことができ、なかなか焼け落ちるということはありません。そのため、安全な場所に避難する時間を確保することは可能です。
4、結局どんな構造の家がいいの?
ここまで木造の家やその他の構造の家の特徴、メリットやデメリットをご紹介しましたが、結局どんな構造の家にすれば良いのだろうと悩まれている方もおられるでしょう。
結論から言うと、以下の4点の優先順位や価値観よると言えるでしょう。
(1)予算
家の建築費用に関しては、木造は安く、鉄骨鉄筋コンクリートは高くなります。
(2)デザインの好み
デザインはモダンでシック、おしゃれでクールな感じが良ければ鉄骨造や鉄筋コンクリート造がデザイン的にマッチします。和モダンでリラックスできる雰囲気がよければ木造の家が良いでしょう。
(4)アレルギーなどの有無
アトピーやシックハウス症候群がきになる方は木造の家で自然素材にこだわった設計にされるのがおすすめです。
(5)どこまで家に耐震性や耐火性を求めるか
単に強度だけで見れば、木造よりも鉄骨造や鉄筋造の方が耐震性も耐火性も優れているといえるでしょう。しかし、実際に大震災を経験した土地では木造でも鉄骨鉄筋コンクリート造でも倒壊している建物はあります。
結局のところ、激しい揺れがあった場合、接合している部分がしっかりしていれば、被害を防ぐことができますし、材質が強固でも施工がきちんとできていなければ建物の損傷を防ぐことはできません。
つまり、材質や構造だけではなく、施工する業者の仕事の丁寧さ、定期的なメンテナンスなどもとても大切なのです。
家の構造や理想のデザインがイメージできたら、次は、できるだけ早く、相性が良く信頼できる業者選びをするようにしましょう。
5、まとめ
いかがでしたか。今回は、木造の家とそれ以外の構造の家の違いや、木造の家のメリットとデメリットについてご紹介しました。
日本では昔から気候や文化、歴史的な背景から、木造の家が多かったので、その流れを受け継いで、現在も木造住宅が主流となっています。
最近は、自然素材の家が人気ですが、これはやはり木や土の息遣いを普段から感じ、安らぎを感じることができるからではないでしょうか。
鉄骨造や鉄筋造にもメリット、デメリットはあります。
これから一戸建ての家を建てられるご予定の方で、木造にするか、その他の構造の家にするか迷っておられる場合には、建て替えの可能性の有無、間取りの自由度、予算、耐久性などを考慮して、ご自身にあったプランを見つけてください。今回の記事が一戸建てを検討されている方のご参考になれば幸いです。