劣化対策等級は、不動産の評価の場面で活用される項目ですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。この記事では、劣化対策等級の概要や各評価項目など、劣化対策等級に関する様々な知識についてお伝えします。具体的には、住宅性能表示制度や劣化対策等級が付いた住宅のメリット、劣化対策等級の評価方法などについて解説します。
劣化対策等級とは?
そもそも劣化対策等級とは、どのような評価基準なのでしょうか。ここからは、不動産の評価の現場で活用されている、劣化対策等級に関する概要について分かりやすく解説していきます。
「劣化対策等級」の概要
劣化対策等級とは、住宅性能表示制度で建物を評価する項目のひとつです。劣化対策等級によって、建物の劣化対策がどの程度行われているか評価することができます。劣化対策等級のランクは3等級で表され、等級が高ければ高いほど建物は長持ちします。
等級3は、通常想定される条件のもと、3世代まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているものです。
等級2は、通常想定される条件のもと、2世代まで大規模な改修工事をせずに使えるように対策されているものです。
等級1は、建築基準法で定める通りの対策が講じられているものです。
住宅性能表示制度とは
住宅性能表示制度とは、住宅の性能が適正に評価され、安心して住宅を購入できる市場を実現するための制度であり、2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいています。
住宅性能表示制度には、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」という2種類の書類があります。
設計住宅性能評価書には、設計図書の段階での評価結果がまとめられています。また、建設住宅性能評価書には、施工段階・完成段階の検査の評価結果がまとまれています。住宅性能表示制度を利用するには、全国各地の第三者機関に住宅の評価を依頼しなければなりません。
劣化対策等級が付いた住宅のメリット
ここまでは、劣化対策等級の概要について解説しました。ここからは、劣化対策等級が付いた住宅のメリットについてお伝えしていきます。
住宅の性能を比較できる
劣化対策等級が付いた住宅のメリットとしては、まず、住宅の性能を比較できるようになることが挙げられます。等級により住宅の性能が明白となり、ほかの物件と比較しやすくなり、売却時のセールスポイントです。
買主としてのメリットとしては、異なる業者によって建てられた物件でも劣化対策等級の定義は同じであるため、希望に合う性能の物件を見つけやすくなります。
劣化対策等級の評価は、国土交通大臣に登録をした登録住宅性能評価機関が評価を行います。第三者によって行われるため、公正な評価が期待できます。新築物件は設計・建設・完成の段階で4回の検査が行われます。
住宅ローンや地震保険の優遇を受けられる
建設住宅性能評価書の交付を受けると、住宅ローンや地震保険の支払いの一部が控除される場合があります。
一定の要件を満たせば、住宅金融支援機構による長期固定金利住宅ローン「フラット35」の手続きが簡素化できるというメリットもあります。
トラブルを防ぎやすくなる
建設住宅性能評価書が交付されている住宅でトラブルが発生したときに「指定住宅紛争処理機関」への対応を依頼できます。
指定在宅紛争処理機関とは、国土交通大臣が指定した機関のことで、全国の弁護士会などが指定されています。トラブル発生時に弁護士など専門家のフォローが期待できることは大きなメリットといえます。
劣化対策等級の評価方法
劣化対策等級の概要とメリットについて解説してきましたが、劣化対策等級はどのような検査が行われるのでしょうか。ここからは、劣化対策等級の評価方法について分かりやすくお伝えしていきます。
住宅の構造によって評価方法が異なる
劣化対策等級は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造といった物件種別により、評価の基準が異なります。物件種別ごとの主な評価基準は、以下の通りです。
木造:シロアリや腐朽菌による腐敗対策について評価する
鉄骨造:サビによる劣化への対策を評価する
鉄筋コンクリート造:鉄筋のサビやコンクリートの傷み対策を評価する
劣化対策等級で求められる基準(木造の場合)
・等級3の基準
木造物件の等級3の基準として求められる基準は、以下の通りです。
外壁の軸組における防腐・防蟻措置
土台の防腐・防蟻措置
浴室と脱衣室の防水措置
地盤の防蟻措置
基礎の高さの確保
床下の防湿・換気措置
小屋裏の換気措置
構造部材等の基準法施行令規定への適合
・等級2の基準
木造物件の等級2の基準として求められる基準は、以下の通りです。
外壁の軸組における防腐・防蟻措置
土台、浴室と脱衣室、地盤、基礎、床下、小屋裏、構造部材等の、基準への適合
・等級1の基準
木造物件の等級1の基準として求められる基準は、以下の通りです。
構造部材等の基準への適合
劣化対策等級で求められる基準(鉄骨造の場合)
・等級3の基準
鉄骨造物件の等級3の基準として求められる基準は、以下の通りです。
構造躯体の防錆措置
床下の防湿・換気措置
小屋裏の換気措置
構造部材等の基準法施行令規定への適合
・等級2の基準
鉄骨造物件の等級2の基準として求められる基準は、以下の通りです。
鋼材の防錆措置
土台、浴室と脱衣室、地盤、基礎、床下、小屋裏、構造部材等の、基準への適合
・等級1の基準
鉄骨造物件の等級1の基準として求められる基準は、以下の通りです。
構造部材等の基準への適合
劣化対策等級で求められる基準(鉄筋コンクリート造の場合)
・等級3の基準
鉄筋コンクリート造物件の等級3の基準として求められる基準は、以下の通りです。
セメントの種類
コンクリートの水セメント比
部材の設計・配筋
コンクリートの品質
施工計画
構造部材等の基準への適合
・等級2の基準
鉄筋コンクリート造物件の等級2の基準として求められる基準は、以下の通りです。
等級3の基準への適合
等級2の場合、コンクリートの水セメント比が等級3に比べて高くなります。
・等級1の基準
構造部材等の基準への適合
以下のURLから、確認が可能です。
※参考:「評価方法基準」国土交通省
http://www.mlit.go.jp/common/000052960.pdf
劣化対策等級は内容を理解して購入や売却の場面で正しく活用しよう
劣化対策等級は、不動産を購入する側にとっても売却する側にとっても、メリットのある評価制度といえます。ただし、その制度の意義やメリットが、これから不動産を売買する当事者たちに対して正しく伝わっているかというとそうではないのが現状です。劣化対策等級を活用するためには、劣化対策等級という制度についての正しい理解が必要不可欠です。
記事内でも解説した通り、劣化対策等級には、3つの等級があり、それぞれの評価基準は異なります。これから不動産の購入あるいは売却を検討している人は、劣化対策等級について正しく理解すると同時に、いかに劣化対策等級を活用するのかという観点から売買に従事して頂ければと思います。今回の記事が、劣化対策等級の理解と活用のためにお役に立てば幸いです。