地震大国である日本。家を建てるにあたって、地震への備えはしておきたいものですね。実は、建物における地震への構造上の備えとしては、「免震」「耐震」「制震」の3種類があります。この3つの言葉は知っていても、それぞれの違いについては、詳しく知らないという方もいるかもしれません。
そこで今回は、免震、耐震、制震の3つの構造上の違いや特徴、メリットやデメリットについてご紹介します。それぞれの違いを踏まえて、あなたの家にあった地震対策の参考にしてくださいね。
1、耐震とは?
(1)耐震とは
耐震とは、文字どおり、地震に耐えることです。また、建物の壁に筋交いを入れるなどして、揺れに耐えられるよう工夫されたものを耐震工法と呼びます。現在の日本では、大震災を教訓にし、住宅の多くはもちろん、自治体の建物や学校なども、この耐震工法で建てられている建物が多く、最も地震への備えとしてポピュラーな構造と言えます。
(2)耐震住宅のメカニズムや構造
出典:http://g-house388.com/techno.html
地震の力は、主に重量の重い床や屋根に加わるため、その地震に対して建物を壊すことなく、耐えうる家を作るには、床、屋根、壁、柱、梁をしっかり作ることが大切です。耐震住宅の構造はこれを実現するために、建物に筋交いや構造用合板、金具などを使って補強する方法がとられています。
特に、筋交いを入れるケースでは、「片方組み」、「たすき掛け」など、補強材の組み方によって強度も費用も違いますので、どの方法で補強するのか、よく考えて工事を依頼するようにしましょう。
また、壁の補強をする際にも、必要な量を必要な場所に設置しなければ、効果を最大限に発揮することができませんので、専門家の説明をよく受けるようにしましょう。
2、免震とは?
(1)免震とは
免震とは、地震によって起こりうる建物の倒壊や家具の破損を防ぐ目的で建てる工法のことです。
耐震工法や制震工法との大きな違いは、建物の倒壊を防ぐだけでなく、建物内部のダメージも防ぐことができるという点がポイントです。
(2)免震住宅のメカニズムや構造
免震住宅は耐震のように、建物を柱や筋交いなどで固めるのではなく、建物の土台と地盤(地面)の間に免震装置を設置して、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造になっています。
免震装置があることで激しい地震で揺れても建物にまで揺れが伝わらず、建物内部のダメージや建物の倒壊を防ぐことができます。
免震装置には、アイソレータと呼ばれる建物を支える土台となり、なおかつ揺れを吸収するゴムと、ダンパーと呼ばれる揺れを吸収する装置を使っています。これらの装置をお住いの地盤や建物に適切に組み合わせることで、より免震性能を高めることができます。
3、制震構造とは?
(1)制震住宅とは
制震とは、制振とも呼び、地震の揺れを抑える目的で作られた工法のことです。免震とは違い、地面に家の土台がくっついているため、地震の揺れが直接建物に伝わりますが、建物内部に重りやダンパーなどの制震材を組み込んでいるため、地震の揺れを熱エネルギーに転換し、吸収することができます。
(2)制震住宅のメカニズムや構造
出典:http://www.suzutatu.websapo.jp/menu3/
制震住宅の場合、免震住宅とは違い、従来の住宅と同じように地面の上に建物を建てます。しかし、内壁と外壁の間に制震ダンパーと呼ばれる揺れを吸収する装置(制震装置)を入れることで、地震の揺れを熱エネルギーに転換することで建物の倒壊を防ぎます。
制震装置として用いられるダンパーには、特殊高滅衰ゴムが使われていますが、このゴムには、地震の揺れを熱エネルギーに変換する力があります。転換された熱は空気中に消えるので、結果的に地震のエネルギー(揺れ)を吸収したことになります。これが制震住宅のメカニズムです。
4、耐震、免震、制震それぞれのメリットとデメリットを比較
ここまで、耐震、免震、制震の構造やメカニズムについてご紹介しました。それでは、快適で地震に強い安心できる家づくりを実現するには、どの工法にするのが良いのでしょうか。
それぞれの工法のメリットとデメリットをまとめて整理してみましょう。
(1)耐震工法のメリットとデメリット
まずは、日本の建築基準法などの法令にも定められており、最もポピュラーな工法である耐震工法について、メリットとデメリットをまとめましょう。
①耐震工法のメリット
②耐震工法のデメリット
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このように、今から家を建てる場合は、耐震基準に従って建てるためすべての家が耐震住宅ということになります。ただし、建築基準法は、耐震等級1という、地震対策における最低限の耐震性能を有していれば良いということになっています。
もっと地震に強い家を建てたいという場合には、コストが上がりますが耐震等級2(耐震等級1の1.25倍)や耐震等級3(耐震等級1の1.5倍)の家を作ることも検討しましょう。
また、耐震等級が高ければ高いほど良いというわけではありません。耐震住宅は、建物内部の損傷に注意しなければならないので家具を固定するなど、家の中の防災について工夫を忘れないようにしましょう。
(2)免震工法のメリットとデメリット
続いて、最も優れた工法であり、今後日本において主流となってくるであろう免震工法のメリットとデメリットをまとめます。
①免震工法のメリット
②免震工法のデメリット
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耐震は、地震が来たとき、ダイレクトに建物に揺れが伝わるので、地震が苦手な方は、建物は丈夫でも怖く感じてしまう可能性があります。また、遠心力の影響で地面から遠い2階や3階は、揺れが大きく感じられてしまうでしょう。さらに、家具にも揺れが伝わるため、家具が移動したり、棚の中のものが出てしまったりなどのリスクがあります。そのため、二次災害が危険です。
しかし、免震工法であれば、建築時に制約は多いものの、建物内部の損傷が少なく済むので、大切な家財道具を守りたい方に向いている工法です。
ただし、アイソレータと呼ばれる免震装置は定期的な交換が必要です。耐用年数40年と言われていますが、歴史が浅いため、まだ実証に至っていません。
(3)制震工法のメリットとデメリット
最後に耐震と免震の良いとこ取りである制震工法のメリットとデメリットをまとめます。
①制震工法のメリット
②制震工法のデメリット
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このように、制震工法は、地震の揺れを抑え、建物内部のダメージを防ぎつつ、コストも免震工法よりもお手頃であるため、耐震工法と免震工法のちょうど間をとった工法といえます。また、地震があるたびにメンテナンスや検査をする必要がほとんどなく、定期的なメンテナンスといっても簡易なもので済んだり、数年おきで良かったり、耐震工法や免震工法よりも手間がかかりません。
さらに、免震工法のように基礎部分に大掛かりな工事をせずに済むので、リフォーム工事で地震対策を検討されている方にもおすすめです。
5、まとめ
いかがでしたか。今回は、地震への備えには耐震、免震、制震のどれが良いのか、それぞれの特徴やメリット、デメリットについてまとめてご紹介しました。
どの工法も地震への備えとして工夫された構造なので、地震対策をされる方は迷ってしまいますよね。
そんな場合には、予算、住んでいる人の揺れへの感じ方、家の損傷の程度、地下室の要不要などによって、選択肢を絞っていかれると、自分に合った地震に強い家になるのではないでしょうか。
また、耐震+制震、耐震+免震などそれぞれの良さをうまく組み合わせると、バランスが良くなり、より地震に強い安心できる家になります。そして、どの工法にするかも大切ですが、設計通りに不備なく施工してくれる業者を探すこともとても重要なポイントになります。相性が良く、信頼できる業者に出会えるよう、しっかりリサーチしましょう。
今回の記事が、これから家を建てるご予定の方の参考になれば幸いです。