地震大国と呼ばれる日本では、いつどこで地震が起きてもおかしくありません。普段から防災意識を高めて、防災グッズを準備されている方もいるのではないでしょうか。
しかし、防災グッズだけでなく、今お住いの家の耐震性を高めて、いざというときに備えておくことも大切です。近年では耐震性の高さを売りにした住宅も販売されています。
しかし、すでに建っている家の場合、また建て直すのは大変なことです。家を一から建て替える予定や予算がないのであれば、現状で家の耐震性を高めるには、耐震補強工事を行うのがおすすめです。そこで今回は住宅の耐震性を高める耐震補強工事とはどんなものなのか、流れに沿ってご紹介します。
1、耐震補強工事とは?
(1)耐震補強工事とは?
耐震補強工事とは、大地震から家と家族の命を守るために、お住いの家に耐震性が不足している場合、現在の耐震基準を満たした建物にするための工事のことです。具体的には、住宅の基礎部分が弱い場合はコンクリートで補強をしたり、壁が弱い場合には新たに筋交いを入れたりして補強工事を行います。
また、住宅の経年劣化によるものだけでなく、もともと地盤が弱い土地にお住いの場合は、地盤そのものの補強工事も含める場合があります。
(2)耐震性が気になったら、まずはセルフチェック!
将来を見据えて、お住いの家の耐震性が気になり始めたら、耐震補強工事について本格的に検討し始めるのがおすすめです。が、その前に、自分の家が、本当に耐震補強工事が必要な住宅なのかどうかを確認することも大切です。
そこで、おすすめしたいのが、国土交通省が監修し、日本建築防災協会がホームページで公開している「誰でもできる我が家の耐震診断」です。(http://www.kenchiku-bosai.or.jp/files/2013/11/wagayare.pdf)
ここでは、どのようなチェックポイントがあるのか、簡単にご紹介していきましょう。
①昭和56年(1981年)6月以降に建てられた家である昭和56年6月に建築基準法が改正され、耐震基準が強化されました。以降建てられた家は問題ありませんが、昭和56年以前に建築された家は耐震性に問題があるかもしれません。 ②今までに大きな災害に見舞われたことはないこれまでに、お住いの家が、地震だけでなく、台風などによる床下・床上浸水の経験、火災、車の突入事故などの災害に遭遇した経験があると、目に見えないダメージを持っている可能性があるためです。 ③増築したことはない増築時に、既存の壁や柱を撤去したにもかかわらず、適切な補強などを行なっていない場合、家の耐震性が知らず知らずのうちに失われている可能性があります。 ④家に傷んでいる箇所は特に見当たらないシロアリの被害が発生していたり、目に見えて老朽化している部分があったりすると、床が傾いてしまい、耐震性に不安が出てきます。 ⑤建物の平面図はシンプルな長方形や正方形タイプであるL字型やコの字型のような家の場合、シンプルな正方形や長方形タイプの家よりも地震に弱いとされているためです。 ⑥吹き抜け部分はない平面図ではシンプルな四角形の家でも、大きな吹き抜けがあると、地震が起こったときに建物が歪んでしまう可能性があるためです。 ⑦平屋建てである。または、1階と2階の外壁と1階の外壁が直下で一致している平屋建ての場合、地震が来てもそれに耐えられる壁の量と柱の量が十分ある構造をしている家が多いので、構造的にはひとまず安心と言えるでしょう。2階建ての場合、2階の外壁と1階の内壁の壁面が一致していれば床面に大きな負担はかかりませんが、1階部分に壁がないと、床から壊れる可能性があります。 ⑧壁の配置のバランスが取れている1階部分の一部が車庫や倉庫になっている場合、地震があると、その部分の揺れが大きくなります。壁の配置が偏らず、東西南北どの面にも壁がある家だと、揺れが分散されるので一か所に負荷が集中することはありません。 ⑨屋根葺材は軽い素材を使っている屋根の素材に瓦を使っている場合、瓦の重さに耐えうる量の壁があれば良いのですが、壁の量が少ない家だと地震が来たときに重さに耐えきれず崩れてしまう可能性があります。 ⑩基礎は鉄筋コンクリートの布基礎、ベタ基礎、杭基礎のいずれかであるこれら3つの堅固な基礎の場合は地震に対して比較的安心であるためです。 |
以上の10個のチェックポイントのうち、8つ以上クリアしている場合はひとまず安心と言えますが、満たしていない項目が3つ以上ある場合は、なるべく早めに専門家による耐震診断を受けましょう。
2、何から始めたらいい? 耐震補強工事完了までのフロー
大地震に備え、住宅の耐震性を強化したいと考えているけれど、何から始めたら良いのかわからないという方のために、一般社団法人日本建設業連合会で公開されているフローをご紹介し、この流れに沿って耐震補強工事完了までの流れをまとめましょう。
出典:http://www.nikkenren.com/kenchiku/taishinka/repair_2.html
(1)耐震診断
耐震補強工事を検討し始めたら、まずは家の現状を把握するために専門家の耐震診断を受けます。
(2)業者による耐震補強プランの提出
耐震診断の結果、補強工事の必要があれば、業者を探し、耐震補強工事のプランを考えていきましょう。
(3)見積もりなどを比較し補強プランと施工会社の決定
工事のプランや見積もりは1社だけではリスクが高いので、複数の業者に依頼し、比較して決定しましょう。
(4)工事スタート
業者と契約したら、いよいよ耐震補強工事のスタートです。
(5)工事完了、引き渡し
工事が完了し、補強した部分の説明を受け、確認したら引き渡しと決済をおこない、耐震補強工事の完了です。
3、知っておきたいお得な情報! 耐震補強工事で受けられる助成金
日本の各自治体では、今後予想される大地震に対する不安や被害を軽減するために、積極的に耐震補強工事への助成金制度を設けています。
ここでは例として、世田谷区の場合の助成制度をご紹介します。
<例>東京都世田谷区で木造住宅の耐震補強工事をする場合
以上の要件を全て満たす物件は、自治体が区登録の耐震診断士を派遣し、無料で耐震診断を受けさせてくれます。 耐震診断の結果、上部構造評点が1.0未満と判定された木造住宅は、設計や工事費用の助成が受けられます。 |
お住いの自治体によって、助成金の金額や申し込み方法、助成が受けられる要件は異なっていますので、耐震診断を受けたり、工事の契約をしたり前にしっかり調べるようにしましょう。
4、昭和56年以降に建てた家なら安心?
お得な助成金制度についてご紹介しましたが、実際に助成金を受けられるのは昭和56年以前に建てられた住宅に限る自治体は多いです。
しかし、阪神淡路大震災では、それ以降に建てられた住宅も倒壊しているため、絶対に耐震面で安全とは言い切れません。もしも助成を受けられなくても、今お住いの家に不安がある場合は、耐震診断を受けたほうが良いでしょう。
耐震診断の相場は、延床面積や、竣工時の図面の有無などで多少変わりますが、約20〜50万円です。
検査だけでこれだけの費用がかかるなんて、ちょっと高いのではないだろうかと感じられる方もおられるかもしれません。しかし、一般的に耐震補強工事をすると、平均施工金額は総額で150万円程度であると言われています。
もしも、耐震診断と耐震補強工事のセットで業者を選んでしまうと、業者に言われるまま、高額な費用を支払ってしまうリスクがあるでしょう。
しかし、先に耐震診断を受けておくと、その判定結果をみて、複数の業者に相見積もりを取ることができます。そうすれば、本当に必要な部分にだけ費用をかけることができるので、結局は節約できることになりますから、やはり耐震診断を先に受けておくのがベストです。
5、信頼できる耐震補強工事業社の選び方
耐震補強工事は、お金と時間をかけておこなっても、実際にどのくらい地震に強くなったのかは、目に見えるものではないため、わかりにくいという欠点があります。つまり、実際に地震が起こって見なければ、補強工事の効果があったかどうかがわかりにくいのです。
そのため、そこに付け入る悪質な業者もいます。こういった業者は、とにかく目先の利益だけを追っていたり、補強工事をその業者で請け負うことを条件にしていたり、工事費用に診断料を上乗せしたりするのです。
耐震補強工事では、専門家が家の工法の確認、設計図の有無、地盤など立地条件の確認をするなど、さまざまな作業が必要となり、どこを補強すべきかを正確に判断しなければなりません。そのため、単純にお金をかければ良いというわけではないのが消費者にとっては難しく感じられるところです。
だからこそ、耐震補強工事の業者を選ぶ際には、よくリサーチする必要があります。
良い業者を選ぶためには、例えば、電話などで相談の上、設計図を持って建築事務所や土地家屋調査士事務所を訪ねて見る方法もおすすめです。国家資格をもつ建築士や土地家屋調査士なら、建物の構造面から、耐震についての相談も受けてくれますし、取引がある施工業者を紹介してくれるので、信頼できる業者に出会える可能性が高いのです。
6、まとめ
いかがでしたか。今回は、住宅の耐震性を高める、耐震補強工事についてご紹介しました。マンションのように定期的な検査やメンテナンスを行わない一戸建ての場合、どうしてもメンテナンスや万が一の際の備えが不十分になりがちです。
いざというときのために、お住いの家の耐震性が気になる方は、ぜひ一度、耐震診断を受けてみられることをおすすめします。また、耐震補強工事は家と命を守るためにとても大切なことですが、それ以外にも家具の転倒防止策なども防災のために必要なことなので補強工事をされる際に一緒に対策してもいいでしょう。
今回の記事が防災に関する家のリフォームをご検討中の方のご参考になれば幸いです。